北海道暮らしの読みもの

3D地形を読み込んでいます

地理院タイル(標高タイル、シームレス空中写真、空中写真1974〜78年)を加工して作成。線路の線 © OpenStreetMap contributors。高さは1.5倍に強調

廃線でわかる北海道

日高本線はなぜ戻らなかった?

日高本線は、苫小牧から日高地方の海岸に沿って様似まで延びていた鉄道です。

このうち鵡川〜様似の116kmは、2015年1月の高波で止まったまま、一度も列車が戻らずに2021年4月1日に廃止されました。

スクロールすると、海岸に鉄道が延びたころからたどります

路線の全体

鵡川から様似まで、116km

黄色い線が、廃止された鵡川〜様似のうち、3Dの範囲に入る鵡川から日高東別のあたりまでです。この先、三石、浦河を通って様似まで続いていました。

標高データで測ると、駅の高さは鵡川が約7m、厚賀と静内が約4〜5m、浦河が約3mです。線路は、ほとんど海と同じ高さを走っていました。

1926〜37年

海岸を、東へ延びていく

1926年、日高拓殖鉄道が苫小牧の方から静内まで鉄道を開通させました。

その後、1935年に浦河、1937年に様似まで延び、日高本線が全通しました。日高振興局の資料によると、様似からさらに、えりもを通って帯広まで鉄道を結ぶ計画もありましたが、実現しませんでした。

静内

日高で、ただ一つの鉄道

日高本線は、日高地域でただ一つの鉄道でした。

静内は、今の日高地方の中心地です。旧静内駅は、鉄道がなくなった今もバスターミナルとして、地域の交通の中心になっています。

2015年1月8日

線路の下の土が、海へ

2015年1月8日の朝、線路を見回っていた社員が、厚賀〜大狩部(苫小牧から67k506m)で、線路の海側の盛土が流れ出しているのを見つけました。

低気圧による高波で護岸の根元を守る「根固め」が壊れ、その下が掘られて、護岸の裏の土が吸い出されました。流れた長さは13m、土の量は約100㎥でした。赤い線が厚賀〜大狩部です。

被災した場所

崖と海のあいだの、細い場所

被災した場所のまわりです。線路は、崖のすそと海のあいだの狭い所を、護岸に守られて走っていました。

JR北海道の報告では、この場所では以前にも3回、同じように土が吸い出されていました。

1970年代

昔から、海のすぐそばを

1974〜78年の空中写真に切り替えました。50年ほど前も、線路は崖のすそと海のあいだを通っていました。

JR北海道は2016年の資料で、線区の多くが海岸線にあり、地質が砂質土のため高波などによる護岸の災害が多いこと、海岸侵食の対策として離岸堤の整備が必要なことを示しています。

2015年3月

直すには、海岸ごと守る工事が要る

JR北海道は、鉄道総合技術研究所の報告をもとに、護岸の作り直し約4.5km、根固め約3.3km、消波ブロック約1.5kmなどの対策が必要だとしました。崖から落ちる石や土を防ぐ工事も必要とされました。

鵡川〜様似の116kmは、バスでの代行になりました。

2016年11月

86億円の見積もり

2016年11月、JR北海道は鵡川〜様似を「当社単独では維持することが困難な線区」に挙げました。

線区の多くが海岸線にあり、地質が砂質土で、高波や大雨による災害が多いこと、台風災害などの復旧費が86億円になること、別に古い橋やトンネルなどに10年で53億円程度かかり、海岸侵食の対策として離岸堤も必要なことを示しました。

2020年

7町が選んだ、バスへの転換

2020年10月23日、日高町村会(日高地方の7町)は、「廃線合意・全線バス転換」という結論をJR北海道と書面で取り交わしました。運休から約5年9か月でした。

JR北海道は、バスの維持やまちづくりの費用として25億5,500万円を出すことなどを約束しました。

2021年4月1日

一度も戻らないまま、廃止

2021年4月1日、鵡川〜様似は廃止されました。日高振興局は、JR北海道で、災害が原因で全線復旧せずに廃止となった初めての例であり、1995年の深名線以来、最も長い116kmの廃止としています。

代わりに、道南バスとJR北海道バスの2社が、日高地域のバスを走らせています。

現在

残った苫小牧〜鵡川

日高本線のうち、苫小牧〜鵡川は今も列車が走っています。

日高地域は、鉄道のない地域になりました。

現在

海と線路のあいだ

日高本線は、海のすぐそばを走ることで、日高の町と町を結んでいました。

その海に近いことが、最後には鉄道を止めることになりました。

日高本線(鵡川〜様似)の年表

1926年日高拓殖鉄道が静内まで開通
1935年浦河駅ができる
1937年様似まで開通し、日高本線が全通
2015年1月7日低気圧による高波のおそれで、全線の運転を止める
2015年1月8日厚賀〜大狩部で盛土の流出が見つかる
2015年3月11日JR北海道が今後の災害対策を公表。鵡川〜様似の116kmはバスで代行
2015年12月「JR日高線沿線自治体協議会」が発足
2016年11月18日JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」に挙げる。復旧費は86億円と試算
2020年10月23日日高町村会(7町)とJR北海道が、廃線とバス転換の合意の書面を取り交わす
2020年10月27日JR北海道が鉄道事業の廃止を届け出る
2021年4月1日鵡川〜様似を廃止。転換バスが走り始める

JR北海道、日高振興局、新ひだか町、国土交通省の資料によります。日高拓殖鉄道の厚賀までの開通、国の鉄道になった年、苫小牧〜鵡川の開業は、公的な資料で確かめられなかったので載せていません。

よくある質問

日高本線はいつ廃止されましたか?

鵡川〜様似の116kmが、2021年4月1日に廃止されました。苫小牧〜鵡川は今も列車が走っています。

なぜ日高本線は止まったのですか?

2015年1月8日、低気圧による高波で、厚賀〜大狩部の護岸の根元が壊れ、線路の下の盛土が流れ出したためです(JR北海道の報告)。

なぜ復旧しなかったのですか?

JR北海道は2016年、台風災害などの復旧費が86億円になるという見積もりを示し、線区を単独では維持が困難としました。日高地方の7町は、JR北海道の経営状態や国・道の支援の姿勢、鉄道へのニーズなどを踏まえ、2020年に「廃線合意・全線バス転換」を選びました(新ひだか町の広報による)。

廃止のあと、日高の交通はどうなりましたか?

道南バスとジェイ・アール北海道バスの2社による、日高地域の広域公共バスが走っています。

訪ねるときは

廃止された線路やトンネルには、立ち入らないでください。JR北海道と日高町村会の約束でも、トンネルなどへの立ち入り禁止の措置がとられています。被災した場所のまわりは崖と波打ち際で、近づくと危険です。高波で止まった鉄道の跡は、道路から見てください。

この地図について

今の地形と写真、1974〜78年の空中写真は、国土地理院のデータを開いたブラウザがその場で読み込んで描いています。起伏が見えるよう、高さは1.5倍に強調しています。1974〜78年の写真は沖のほうに写っていない所があり、その部分は今の写真が見えるようにしています。沖に見える四角い模様は、写真のつなぎ目です。

3Dに描けるのは、鵡川から日高東別のあたりまで(約67km)です。細かい空中写真を使うと、116kmすべてを1つの3Dに入れられないためです。三石、浦河、様似のあたりは3Dの範囲の外です。

黄色い線は、OpenStreetMapの日高本線の廃止区間です。全線つなぐと114.7kmで、鵡川駅までを足すと、JR北海道の資料の116.0kmとほぼ同じです。被災した場所は、JR北海道の報告の「苫小牧から67k506m」を、苫小牧〜鵡川の30.5kmを引いて線の上で測った、おおよその位置です。

空中写真の出典:地理院タイル(シームレス空中写真、空中写真1974〜78年)。「電子国土基本図(オルソ画像)」、「東日本大震災後正射画像」、「森林(国有林・民有林)の空中写真(林野庁)」、「地方公共団体等の空中写真」、「簡易空中写真」、「国土画像情報」から作成されたものです。地理院タイル一覧。線路の線:© OpenStreetMap contributors

参考にした資料

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