3D地形を読み込んでいます
地理院タイル(標高タイル、全国ランドサットモザイク画像)を加工して作成。データソース:Landsat8画像(GSI,TSIC,GEO Grid/AIST), Landsat8画像(courtesy of the U.S. Geological Survey), 海底地形(GEBCO)。海底の深さはETOPO 2022(NOAA NCEI)。高さは2倍に強調
地形でわかる北海道
知床半島はなぜ細長い?
知床半島は、北海道の東北端からオホーツク海に突き出た半島です。長さは約70km、根元の幅は約25km。右奥には、同じ向きにのびる国後島が見えます。
なぜ、こんなに細長いのか。答えは、半島が横から押し縮められてきたことにあります。海の底の時代からたどっていきます。
スクロールすると、海の底の火山から、押されて盛り上がる半島、国後島との並び、羅臼の深い海までたどります
現在
真ん中に、山が一列に並ぶ
上から見ると、半島の中央を、羅臼岳(1,661m)をはじめとする標高1,500mを超える火山が縦に連なっています。一部の海成段丘のほかは、稜線から海岸まで平地がほとんどありません。
西はオホーツク海、東は根室海峡です。
860万〜200万年前
はじめは、海の底の火山だった
ここからは、今の半島を消して海にした想像の姿で見ていきます。周りの陸は今の形のままです。
環境省の世界遺産の推薦書によると、860万〜200万年前には海底火山の活動が活発でした。そのとき積もった「ハイアロクラスタイト」(溶岩が水で急に冷えて砕けた岩)の地層が、今も海岸に広く見られます。噴煙の位置はイメージです。
200万〜25万年前
根元から、陸になっていく
半島の先端では海底火山が続く一方、根元では陸上の火山活動が始まりました。
陸が伸びていく速さや高さはイメージです。
25万年前〜現在
横から押され、細長く盛り上がる
約25万年前からは、押し縮める力がかかり、半島全体が褶曲しながら隆起しました(推薦書)。押す向きは、半島を横切る北西―南東の方向です。
地層は、半島の中央を軸にした細長い「山折り」(背斜)になりました。知床半島の火山と地層を調べた後藤(1993)は、知床半島はこの圧縮で地層が背斜構造をつくって形成された、とまとめています。細長い形は、押されてできた地層のしわの形です。
24万年前〜
しわの頂に、火山が一列に並ぶ
火山は、褶曲の軸にあたる半島の中央に沿って並んでいます(推薦書)。後藤(1993)は、押されて盛り上がった背斜の軸の上に割れ目ができ、そこにマグマが入って陸の火山ができた、と説明しています。溶岩は、すべて半島の軸の上から流れ出ています。
知床硫黄山は遅くとも24万年前には活動を始め、羅臼岳は10万年前以降に活動した火山です。
現在
国後島も、同じ向きに並ぶ
知床半島、国後島、択捉島は、同じ向きの細長い陸が少しずつずれながら斜めに並んでいます。このような並び方を雁行配列といいます。後藤(1993)は、国後島と択捉島も知床半島と同じく、地層の背斜構造でできたとしています。
推薦書は、この並び方を、太平洋プレートが北米プレートの下に斜めに沈み込み、千島海溝に接するプレートの境目の部分が西へ動くことで、雁行状に力がかかるためと説明しています。木村(1981)によると、知床半島は今も、半島を横切る方向に押し縮められていることが、地震や測量、活断層からわかっています。
8万年前〜
西は、流氷も削る断崖
西のオホーツク海側では、100万年前以降の火山の岩が、波に加えて海氷にも削られ、海食崖ができました。ウトロのまわりには、8万年前に羅臼岳から流れ出た硬い安山岩の、高さ60〜120mの崖が続きます。
これに対して、東の根室海峡側の海岸はなだらかで、ハイアロクラスタイトの地層が削り残された奇岩があちこちに見られます。
現在
東は、すぐに深くなる海
海の水を透かし、海底を深い所ほど濃い色で塗りました。線は500mごとの深さです。北の深い海から、羅臼のほうを見ています。羅臼の沖では、岸から7kmほどで水深は約600mになります(ETOPO 2022)。根室海峡の海底は、5mほどの浅瀬から約2,000mの深さまで急に落ち込んでいます(羅臼町)。
盛り上がった半島のすぐ東に、深い海が口を開けています。
現在
浅瀬から深海までの魚
羅臼町によると、根室海峡では、浅い海の魚から深海魚まで、さまざまな魚がとれます。キンキ(キチジ)、ブドウエビ、マダラ、ツブ貝、カニなどです。キチジは、水深150〜1,200mの大陸棚の斜面にすむ魚です(道総研、道東太平洋)。冬に根室海峡に集まるスケトウダラは、主に水深200〜400mで卵を産みます(道総研)。
環境省の調査では、羅臼沖は水深や海底の様子の変化に合わせて、すむ生き物もさまざまに違うことが報告されています。2016年の羅臼町の漁獲量は2万4,106トンで、スケトウダラ、サケ、スルメイカが主な魚です。
1935〜36年
黄色い川になった、硫黄の噴火
知床硫黄山は、溶けた硫黄を大量に噴き出す、世界でも珍しい火山です。
1935〜36年の噴火では、1日に最大数千トン、合計で約20万トンの硫黄が噴き出し、カムイワッカ川や海岸は黄色く覆われました。約20万トンは、当時の日本の1年間の硫黄の産出量を超える量でした。今も噴気が確認されています。
2005年
海と陸がつながる世界遺産
知床は2005年に世界自然遺産に登録されました。評価されたのは、流氷から始まる海と川と森の生態系のつながりや、生物の多様性です。
険しい断崖は、人や天敵を寄せつけず、海鳥の繁殖地になっています。
現在
押されてできた、山の列
知床半島が細長いのは、横から押し縮められて、地層が細長いしわのように盛り上がったからです。そのしわの頂に火山が一列に並び、国後島や択捉島も同じ向きのしわとして斜めに並んでいます。
しわの山は海に突き出て、西は流氷に削られる断崖に、東は深い海に面しています。その深い海が、浅瀬から深海までの魚を羅臼にもたらしています。

