翠巌 Suigan 翠巌酒店

翠巌（すいがん）は、札幌市南区・定山渓温泉のなかでも国立公園内の景勝地「舞鶴の瀞（まいづるのとろ）」近くに建つ、全7室のオールスイート宿です。場所は「札幌市南区定山渓温泉西1丁目86」。札幌中心部から車でおよそ1時間、新千歳空港からは高速道路経由で1時間半前後と案内されており、送迎バスや路線バスを組み合わせたアクセスも可能です。定山渓温泉街の中心部から少し離れた立地で、渓谷の向こうに山の緑が広がる静かな環境が特徴です。

宿のコンセプトは、「客室内完結型」の滞在です。館内にはラウンジや大浴場は設けず、7室すべてを温泉付き特別室として設計し、「食事も湯浴みもくつろぎも、すべて客室で完結する」スタイルを打ち出しています。小学生以上のみが宿泊できる大人向け施設で、スタッフも基本的に客室には立ち入らない方針をとっており、プライベート感の高い空間を重視している点が特徴です。

客室はすべてスイート仕様で、1室ごとに間取りや設えを変えた全7タイプが用意されています。大きな露天風呂を備えた客室、サウナ付きの客室、シアタースペースのある客室、寝湯を備えた客室など、一つとして同じ造りの部屋はありません。いずれもリビングとベッドスペースをゆったりと確保した構成で、テレビ、冷蔵庫、Wi-Fi、洗浄機能付きトイレ、各種アメニティを標準装備。全室に、グループ施設が持つ3本の自家源泉をブレンドした温泉を引き込んでおり、好みのスタイルで客室内湯を楽しめるようになっています。

翠巌には「本館」に加え、2025年10月にオープンした別館「松直棘曲（まつはなおく いばらはまがれり）」があります。本館が7室の温泉付きスイートで客室内完結型の滞在を提案しているのに対し、別館は全7室・展望風呂付き洋室の山側客室で、食事はオープンスタイルのレストランで提供する構成です。禅語「松直棘曲」を名前に掲げ、「それぞれの個性を大切に、自然のままに過ごす」ことをテーマに、自然を眺めながら客室温泉と食事を楽しむスタイルがうたわれています。

温泉は、第一寶亭留グループが所有する3本の源泉をブレンドしたナトリウム‐塩化物泉で、全客室の内湯・露天風呂・寝湯などにかけ流しで供給されます。泉質は保温力の高い塩化物泉で、湯上がり後も体が冷えにくい「温まりの湯」として案内されており、神経痛・筋肉痛・冷え性・疲労回復などに適応症があると説明されています。大浴場こそありませんが、その分「好きな時間に、何度でも、自分だけの湯船で入る」スタイルに振り切っているのが特徴です。

食事は、客室内でゆっくりと味わえるよう配慮されています。本館では希望に応じて、専用扉から料理を客室に届ける形を採用しており、前菜からデザートまでコース仕立ての食事をプライベートな空間で楽しめます。献立は季節ごとに変わり、北海道産の野菜や魚介、肉を中心とした構成で、派手な演出よりも素材の持ち味を生かした内容とされています。別館「松直棘曲」では、オープンキッチンを備えたレストランで、自然をそばに感じながらコース料理をいただくスタイルです。

館内設備は、あえて絞り込まれています。翠巌自体にはラウンジや大浴場はありませんが、「翠巌プレミアムアクセス」という特典が設定されており、滞在中は第一寶亭留グループが運営する周辺施設の大浴場やラウンジを無料で利用できます。具体的には、定山渓第一寶亭留 翠山亭や森の謌などグループ各館の浴場・ラウンジへ送迎付きでアクセスできるほか、系列ジェラート店「雨ノ日と雪ノ日」のジェラート食べ放題、かき氷店「森乃百日氷」の席の確約など、周辺施設と組み合わせた滞在ができるよう工夫されています。

アクセスは、札幌市中心部から国道230号線を南へ進み、定山渓温泉街を過ぎて「舞鶴の瀞」方面へ向かったエリアです。公式サイトの案内では、札幌駅からの無料送迎バス（事前予約制）や、地下鉄・バスを乗り継ぐルートも紹介されており、車を使わない旅でも訪れやすい環境になっています。駐車場も用意されているため、レンタカーや自家用車での利用も問題ありません。

総じて、翠巌は「温泉付きスイートルームにこもって、部屋の中で完結する滞在」を前面に出した、定山渓でも個性のはっきりした小規模宿です。にぎやかな大浴場や館内アクティビティが充実した大型リゾートというより、静かな環境で温泉と食事、渓谷の景色をゆっくり味わいたいカップルや夫婦、友人同士の少人数旅行向けの一軒と言えます。