雨ノ日と夕やけ Amenohi To Yuyake 下雨天與夕陽

「雨ノ日と夕やけ」は、北海道・千歳市の支笏湖温泉、湖を見下ろす高台にたたずむ全6室の小さな宿です。札幌から車でおよそ70分、新千歳空港からは30分ほどの距離ながら、周囲を国立公園の森と静かな湖に囲まれたロケーションで、街の喧騒からきっぱり距離を置いた滞在ができます。

建物は木造で、客室数はわずか6室。ダブルルーム、ツイン中心のスタンダードルーム、少しゆとりのあるデラックスルーム、popIn Aladdinを備えたミニシアター付きの客室など、全室レイアウトや雰囲気が少しずつ異なります。いずれもバス・トイレ付きの個室で、アースカラーを基調としたシンプルなインテリアが特徴。Bluetoothスピーカーや電気ケトル、セーフティボックス、ルームウェアなど基本的な設備が揃い、Wi-Fiも利用できます。館内は全館禁煙で、13歳以上のみ宿泊可能という大人向けの設定になっており、静かに過ごしたい人には好条件です。

バスルームには温泉ではないもののジャグジーバスを備えており、部屋で湯船に浸かりながらゆっくりくつろげます。一方で、温泉に入りたい場合は徒歩約3分の場所にある姉妹館「支笏湖 第一寶亭留 翠山亭」の大浴場を無料で何度でも利用可能。とろみのある「美人の湯」と評判の泉質で、別料金で貸切風呂の予約もできます。湖畔の宿らしいプライベート感と、温泉旅館の快適さを組み合わせたスタイルと言えます。

共有スペースのラウンジは天井が高く、窓の向こうに山並みと支笏湖が広がる開放的な空間です。チェックイン後から翌朝までコーヒーをいただくことができ、ソファに腰掛けて読書をしたり、手帳を書いたりと、思い思いの時間を過ごせます。夜には「ハッピーアワー」として、美瑛ジャージー牛乳を使った自家製ジェラートが振る舞われ、好みのリキュールを少しかけて楽しむこともできます。静かな雨音を聞きながらジェラートを味わう夜は、この宿ならではの印象的なひとときです。

ラウンジの奥には小さなレストランがあり、夕食と朝食はここで提供されます。カウンター席とテーブル席があり、天気が良ければ窓越しに夕焼けや湖を眺めながら食事を楽しめます。夕食は焼きたてのピザを主役に、季節のサラダやスープなどが組み合わさったコース仕立て。自家製生ハムや自家菜園の野菜、道産チーズなど、北海道の素材をシンプルな調理で味わってほしいというコンセプトが貫かれており、素材の持ち味が前面に出る構成になっています。

朝食は、定山渓精肉店のソーセージや酒井農場の卵、玉ねぎのスープなどを組み合わせた「モーニングセット」。日によっては旭川の酒造の酒粕を使ったスムージーが添えられることもあり、北海道らしい食材を少しずつ味わいながら、一日のエネルギーをチャージできます。量も内容も「がっつり旅館朝食」というよりは、湖畔のカフェで食べるような、ほどよく軽やかなバランスです。

宿の名前の通り、「雨の日」と「夕焼け」の時間をどう過ごすかが、この宿の大きなテーマです。晴れた日はラウンジやレストランの窓から、山の向こうに沈んでいく夕日と、それが支笏湖の水面に映り込む様子を眺めることができます。風が穏やかな夜には、湖面に星がうっすらと映ることもあるといい、天候が味方をしてくれた日には、ここならではのドラマチックな景色に出合えます。早朝には湖畔まで徒歩数分の散歩が楽しめ、霧のたちのぼる静かな湖を眺めながら歩く時間も人気です。

アクセス面では、JR千歳駅から完全予約制の無料送迎バスが運行しており、車を使わない旅行でも訪れやすくなっています。新千歳空港や千歳市内、札幌方面から車で向かう場合も、30〜70分ほどと移動時間は比較的コンパクト。支笏湖バス停から歩いて向かうルートも案内されているので、公共交通機関利用でも計画は立てやすいでしょう。

全体として「雨ノ日と夕やけ」は、大規模な温泉ホテルのような多機能さよりも、こぢんまりとした空間で、ゆっくりと流れる時間と北海道の素材を楽しむことに軸足を置いた大人の隠れ家です。客室数が少なく、館内も静かなため、カップルや夫婦の記念日旅行、ひとりでのんびり過ごすご褒美ステイなどに特に向いています。支笏湖周辺の自然散策やドライブと組み合わせて、「何もしない時間」を贅沢に味わいたい人にふさわしい宿と言えるでしょう。